第10話 武官の訳

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第10話 武官の訳

 *・*・* 『……良いのか、紅狼(こうろう)』  点心局から少し離れた廊下を歩いていると、紅狼は己の九十九(つくも)から問いかけをされた。靄が生じ、顕現するのか形を成し……軽装ではあるが、武具を身につけた女が現れた。  彼女の姿を見ても、紅狼は軽くため息を吐くだけだった。 「見ていたかったが、あの様子では邪魔だろう」 『そうではない。玉蘭(ぎょくらん)であれば、貴殿の呪いを解く鍵となるのではと……貴殿自身が提案したではないか』 「確証は出来ん。だが、望みが薄いわけではない」  紅狼の身体には呪いが蝕まれている。  呪眼(じゅがん)を含める、呪いの幾つか。それを解呪する事を可能かもしれないと、たしかに紅狼自身が思いついたのだが。肝心の玉蘭は長い間封印されていて、孫の恋花(れんか)は疎外された生活を送っていた。玉蘭の孫だからとて、術に精通しているわけではない。それは、九十九である(りょう)が正体を明かした時のあの涙で察することが出来た。  だから、次の手を打つのに、二人を後宮でも厨房に在籍させるために連れてきたのだ。あのままでは、『無し』だった存在が『有り』に変わったことで、扱いがどのように変わってしまうのか心配だった。  大人しいが、完全に気弱ではない少女。
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