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幾つか角を曲がり、楽しそうな声が廊下にも聞こえてくる場所を目掛けて歩いていくと。自分以外の男の声に、紅狼は足を早く動かした。
「ん? 紅狼か?」
軽装の男と、美しく着飾った女性らが一人ずつ。あとは控えている侍女や下女らが居た。基本的に男子禁制の後宮ではあるが、紅狼を入れて、堂々と来られるのはただ一人。
この国の皇帝のみだ。
「……話がある。来てもらえないか?」
「その口ぶりだと、ここでは駄目か?」
「……ああ」
「仕方ない、行くか。緑玲、また来る」
「はい。陛下」
国の長への砕けた物言いは、本来なら打ち首以上の刑に処されるだろうが。紅狼は許されていた。幼い頃からの、遊び相手だったこともあり。
それはさておき、紅狼は皇帝へ恋花らの事をどう伝えれば、彼の九十九の力を借りれるか……いささか不安ではあった。
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