第11話 発酵無し麺麭

3/3
前へ
/268ページ
次へ
「……そんな道具がいるんだねぇ? 主上がもしお気に召されたら、作ることを考えようかね」 「しゅ、主上!?」  その言葉に、恋花は少し忘れかけていた。宮仕えで居場所に近いところが出来ても、本題は皇帝の九十九と接触することだ。彼の九十九の能力が、玉蘭の封印を解く鍵となるかもしれない。今はいない紅狼が動いているだろうが、恋花は可能であれば直接申し出たかった。玉蘭の封印を解いて欲しいと。 『恋花、そろそろ焦げる』  びっくりしている間に、梁が火の通り具合を教えてくれたので頭を切り替え。片面が綺麗な茶色になった麺麭をヘラでゆっくりひっくり返して、もう少し油を足し……また蓋をした。
/268ページ

最初のコメントを投稿しよう!

188人が本棚に入れています
本棚に追加