189人が本棚に入れています
本棚に追加
恋花は軽く息を整えてから、扉の方に行ってゆっくりと開けた。
「……どちらさまで」
しょうか、と言おうとしたのだが。
恋花は相手の顔を見上げた時、窓から見えた役人ということもだが、眼帯があれどなんて美しい男性だと……感心して息を飲んでしまったのだ。眼帯がなければさぞかし美丈夫だっただろうに、と思ったが、町中の九十九にも類似するような美しさを感じた。
「ん? 君は孫か?」
相手は恋花のことを少し知っているのか問いかけてきたので、恋花は慌てて頷く。役人など、九十九のいない恋花にはある意味雲の上のような存在。そのような人間が、祖母に用とは言え何をしに来たのだろうか。
「祖母、ですね。呼んできます」
「ああ、頼む」
九十九は人間に寄り添うが、普段は身体の内側に宿っているとされているので、初対面だけなら役人でもわからないだろう。恋花らの噂を知らなければだが。
食卓に行くと、先にあんぱんを食べようとしていた玉蘭が足音に気づいて、手を引っ込めようとしていたところだった。
「奶奶。お役人様が来てる」
「こんなおいぼれにかい? 昔の仲間かねぇ」
「ううん。もっと若い方だった」
「ふぅん? まあ、行こうじゃないか」
最初のコメントを投稿しよう!