第3話 無しの少女②

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 廊下を歩きながら、玉蘭は衣服の乱れを軽く整えてから裏口に向かった。恋花もその後に続き、再びあの役人の前に立ったが、何度見ても美しいと思うのをやめられない。普段、町中じゃ他人の顔などをじっくり見ないようにしていたので、つい見つめてしまうのだ。 「待たせたね、何の用だい?」  玉蘭は彼の美しさを気にせず声を掛けたのだが、扉にもたれかかっていた役人は怪訝そうな目付きになって、玉蘭を見たのだ。 「……お前、玉蘭殿じゃないな?」  などと言い出したので、恋花がびっくりしていると……玉蘭がこちらを少し振り返り、溶けるように玉蘭の外見が変わっていったのだった。
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