レルネ城

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公爵様に連れられてお店に入って、公爵様は私にアクセサリーをあてられる。 ネックレスやイヤリング。 どれも違ったようで、帽子やリボンを髪にあてられたり。 「どれも価格相応のものといったところかな。サフィアに合うものはないな」 公爵様は不満そう。 私はなんでもいいのだけど。 「どこの貴族様か知らないけどね、服飾小物なんてここではそう売れないんですよ。いいものが欲しければ外の街にいけば他国の交易品が手に入るんじゃないですかね」 店主らしきおばさまにどこか不機嫌に言われた。 領主様なのに。 公爵様のお顔を知らないようだ。 「レルネの特産はなにになるのでしょう?」 私はおばさまに聞いてみる。 バールミントン領では織物。 服や帽子もそうだし、絨毯やカーテンなんかもそう。 生地だけというのも染色されたりして人気だ。 「本来は山から採れる石を使った細工ですよ。石細工、宝石細工。アクセサリーとなるものだってもっといいものがあるけれど、この店に置いたって外から人がめったにこないんだから安く仕入れられても売れない。王都にそのまま流したほうが儲けになる。お嬢様のような可愛い人には淡いピンクや水色の石がついたものをすすめたいけれど、残念ながらないんです。王都のほうがありますよ」 特産品なのに。 いいものは売ってくれない。 レルネの現状は非常によろしくないのでは?と思ってしまう。 「商店の経営を続けていくには領地からの援助や支援は必要そうですか?」 公爵様は聞かれる。 公爵様だし。 してと言われたらしてくれそう。 「じゅうぶん支援していただいていますよ。商品がまったく売れなくても食べさせてもらえています。…ただ甘えてばかりでなにも返せないのがつらくもなります。こちらの領主様はお若くご家族を亡くされて1人にされて。王家だか知らないけれど逃げ出すこともせずに蛮族共を追い払ってくださって。いい方なんですよ」 目の前にいるけど。 自慢なんですとでもいうようにおばさまは言ってくださる。 公爵様のほうがどこか恥ずかしそうに目を逸らされる。 お話も聞かせていただいたし、私は公爵様にこれを買ってと石細工の置物をねだる。 たぶん大理石。 小さな手のひらサイズの動物の彫刻。 かわいい。 これがいい。 クリスタルっぽいものもあるけど、こっちの石がいい。 公爵様は買ってくださる。 お店を出て、私は手のひらに彫刻を乗せて、うきうきと歩く。 これを嵌め込んだら動く仕掛けをつくるのも楽しいかもしれない。 また仕掛けをつくるときに数が必要なら買いにこよう。 お城からそんなに遠くもない。 「サフィアのお陰で市場調査させてもらってるかも。支援はしていても人がいないからどうにもならない。頭に痛い」 「商店に人を集めたいのなら、広場に露店で市場を開けば品物が見やすくていいと思いますよ。安く品物を並べますと宣伝が必要となりますが。付近の街や王都でも宣伝して。出店者がいないなら募集して。屋敷の前の広場で月に一度されていたのは見たことがあります。多くの人で賑わっていました」 いったことはないけど。 お父様が主催していらした。 「市場か。僕が幼い頃は露店市場があった。治安や景観が悪くてやめられてしまったものだけど。なにかしらそういう催しや祭りがあってもいいのかもしれない」 「この街の人だけでお祭りもいいですね。人が少ないからできることも逆にあると思います。治安をそこまで気にせずにいられるとか。予算少なくなにかをして士気をあげることもできるはずです。殿下が働いていても街の人はお顔も知らないようですし?」 「催し物もなかったから領民に顔見せしていないんだよ。だからこうして普通に街を歩けてしまうんだけど」 「でもなぜか振り返られて見られています」 私はまたこちらを見てくる視線を見る。 「貴族がいるのもめずらしいものに見えるだろうし、君が人形のように綺麗だからじゃないか?」 「人形は無機物です。生きているように見えないと仰っていると思ってください」 綺麗は褒め言葉として受け取るけれど。 「あぁ。それはある。生き物には見えない」 公爵様ははっきりと仰られて、私はどこか貶されたように思う。 なんてことを仰ってくださるのか?と公爵様を見る。 「いい意味でだよ。生き物は汚いものだ。君は知恵があるのに、ずる賢いというものを感じない」 「……公爵様のお城の改造を楽しむためにこちらにきました」 「それは僕にとっては君を釣る餌になっただけだよ」 「子作りするつもりはありませんっ」 「今はギルに邪魔されているから僕が仕掛けられていないだけ。君にするつもりがなくても僕にはするつもりがある。君を淋しくさせると君は逃げるどころか抱きついてくれるし。少しは受け入れられてると思うんだけど。違うかな?」 なにかが図星で恥ずかしい。 私は公爵様に甘えてしまっている。 私は公爵様に興味がある。 「公爵様の裸が見てみたいとは思ってます」 正直に言うと公爵様のほうが赤くなられた。 恥ずかしいから目は合わせられない。
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