第二章:誰にも言えない推し

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第二章:誰にも言えない推し

********** ピピピピピ… 片手に握られたスマホから、爆音のアラームが鳴り出し、目が覚める。 どうやら、昨晩は疲れ果てて、そのまま眠ってしまったらしい。 耳元にはワイヤレスイヤホンが転がっていた。 とりあえず、アラームを消して起き上がる。 ボーとしながらも、イヤホンはまた今晩使う予定なので、まずは充電を開始する。 まだ昨晩の余韻が残る中、出勤のために身支度を整え、いつもの時間に家を出た。 ********** 「あ、先輩!おはようございまーす♪」 職場に着くと、仲のいい後輩ちゃんが早速声をかけてきてくれた。 黒髪にポニーテールが似合う、女の子から見ても可愛い女の子である。 「そういえば先輩、昨晩どうだったんですか?」 昨晩…って、まさか、あの、夜のゴニョゴニョ…のことを聞いている…? そう思ってドキドキしていると、こう続けた。 「昨日、先輩の推しさんの新作発売があったんですよね?ゲットできました?」 「あ、うん!買えたよ〜!」 あ、焦ったぁ~。 どうやら私が昨日、推しの音源発売日があるので楽しみにしていたのを覚えていて聞いてくれたらしい。 「先輩の推しさんって配信してるってことは、歌手さんなんですっけ??」 「あー…うん。せ、声優さん、かなー…?」 「あっそうなんですね!私、声優さんは詳しくないんですけど、声優さんってどんな配信されてるんですか?」 そんな本当のことを答えにくい質問をされて、あわあわとしていると、始業時間5分前になっていた。 彼女も時計とチラっと見て、それに気が付いたらしい。 「あ、やばい。そろそろ始業時間なので、また話しましょう!今度、よかったら、詳しく聴かせてくださいね!」 「うん、またね~。」 はぁーーーーー。急に推しのことを詳しく聞かれてびっくりしてしまった。 嘘は言ってない。ただ、本当のことは言っていないので、とってもドキドキしてしまう。 (推しの音源は、さすがに彼女には聴かせられないなぁ。) 私の推しは声優さん。 でもただの声優ではない。 私の推しは「えっちな声優さん」なのだ。
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