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はてさて、どうしてニイル坊ちゃんが坂道王国につかわされたのかといいますと、それはこの王国の人々が、ちょっとしたことで怒るからなのです。
坂道が多くて疲れてしまって、怒りっぽいのでしょうか。
そうではないのです。
もともとは怒りっぽい王国ではありませんでした。
先のことが見えなくなってしまって、それで民衆は苛々しているのです。
赤ん坊が生まれたばかりの家のご夫婦だって、幸先が良ければそんなに怒りはしなかったのです。
何故先のことが見えないかといいますと、我らが尊い女王さまのせいなのです。
残念ですけれど、このことをお話しなければなりませんね。
もともとは聡明でお優しい方でしたのに。
王様に先立たれ、最愛の息子はかわいいお妃さんにうつつをぬかしておりましたから、女王さまはたいそう孤独で頑固な方になってしまったのです。
女王さまが毎日のように気まぐれな命令をお出しになるので、王国の人々は先が見えなくて、すっかり弱りきっておりました。
たとえばある日は、王国中の腕の良い大工さんが集められて城のお庭に台を作るよう命ぜられました。
大工さんたちは力を合わせて立派な物見台を作りましたが、女王さまは不機嫌きわまりないお顔でした。
女王さまが欲しかったのは太陽の光をさえぎるための台でした。
女王さまはご自分のお部屋に暖かな陽の光が入ってくるのさえ嫌になってしまったのです。
でもね、太陽ってのは一日のうちだって移動するものです。
それで大工さんたちは、工夫を重ねました。
台に車輪を付けて動くようにしたり、台から孔雀の羽のようなひさしが飛び出したり、ありとあらゆる工夫です。
ですけれど女王さまはため息を吐くばかりでした。
最初に出来た台の方が、見た目は素敵だったのですって。
そうでしょうとも。
大工さんたちは、クタクタになるまで働いたのに、お給金はほんのちょっと。
おまけに、お家を直してとか、納屋を作りたいっていうお客さんを待たせているんですもの。
でもみんな女王さまの悪口を言うわけにもいかないので、こんな具合になります。
「なんだいその景気の悪い顔は」
「おまえの顔の方が、つぶれたレモンみたいじゃあないか」
「口の利き方がなってない。」
「おまえの口のほうが、ひどいにおいだ」
だいたいの場合、肝心なところを外してするお話というものは難しいものです。
最後には何について話していたか忘れてしまいます。
そうして、嫌な気持ちばかりが残るものです。
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