坂道王国の物語

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 ニイル坊ちゃんはそのような人々を見かけますと、すーっと大きく息を吸うのです。  みんなは怒る気持ちが、すーっとなくなっていくのを感じました。  みんなはニイル坊ちゃんにレモンクッキーを焼いて差し上げるのを忘れませんでしたよ。 「ご存知かも知れませんが、怒ってぷんすかした気持ちというのは、しょうしょう苦いものなんです」 と、ニイル坊ちゃんはどこまでも控えめなのです。 「それでですね。ちょっとばかし甘いものなんかをいただけたら、ぼくもうれしいのです」  こんな坊ちゃんのお願いを、誰だって聞かずにはいられませんよね。  こんな具合にニイル坊ちゃんは、坂道王国の人々の怒りを吸い取って、歩いていらっしゃいました。
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