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さて、女王さまは、ある日カナリアを籠から出しました。
金色のカナリアは女王さまのたいそうなお気に入りでした。
亡き王様が可愛がっていたカナリアは、王様の形見ともいえるものでした。
女王さまは王様と暮らした佳き日々を思い返しては、ため息を吐かれるのでした。
孤独な女王さまの心を癒してくれるのは、このカナリアだけでした。
ちょうど夜明け前でした。
女王さまは朝焼けの光の中でカナリアが飛ぶさまを見たら、少しは太陽が好きになるかしらとお考えになりました。
もちろん窓はしっかりと閉め切ってありました。
しかし女王さまの忠実なる雄鶏は日の出とともに高らかに鳴きましたので、閉めた窓など、ものともしませんでした。
東の窓からの朝焼けの光と雄鶏のときの声にすっかり怯えきったカナリアは、磨きぬかれた鏡台に衝突し、首の骨を折って死んでしまいました。
怒りに震える女王さまは近衛隊長を呼びつけました。
「雄鶏の首をちょん切っておしまい」
近衛隊長は、女王さまがいかに賢く優しいおひとであったか覚えていましたので、この命令を悲しく思いました。
お城の鶏小屋のところまで来て、この雄鶏めが女王さまをあんなに苦しませたのかと思うと、怒りが湧き上がってきました。
近衛隊長は雄鶏の首をちょん切ってしまいました。
しかしながら女王さまのお怒りは深いものでした。
「国中の雄鶏の首をちょん切っておしまい。」
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