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ご飯食べるところを探しながら、おじさんと話した。どこも混んでて決まらない。
「覚えてないの⁈」
「終業式の夜に、姉貴…お前のママ、の意味不明な電話が来て、空港に来たとこまでは覚えてるが…帰ってきたとこなのか?」
「行って帰って行って帰ってきたとこだよ」
「マイルたまってそうだなあ」
のんきだ。ムカっとした。
「大丈夫だ。記憶無くしたことは前にもある」
おじさんは、携帯と小さな手帳を出して見比べた。
「ラクト、二学期から苫小内広陵中に通うことになったんだな。俺がこっちでやることも書いてある。家に帰れば日記もある。何とかなるさ」
軽く言う。
お腹はへってたけど、食欲が出ない。お店も見つからない。
「でも…忘れちゃったんでしょ、夏休み中のこと」
「…すまん。でも」
「ボクのコーディネート褒めてくれたことも」
「ん?」
「このパンツ買ってくれたことも」
「俺が服を人に?」
「福島で色んな美味しいもの食べたり、怖い人とバトルしたりしたことも」
「怖い人?」
「一弘さんと三人で港まつり行ったことも」
「えっ」
一弘さんの名前を出したら少し顔を赤くしたから、もっとムカついた。一弘さんのことは忘れてないんだ。
「ボクは…ボクは、おじさんの所では、ウソつかないで居られて……スカートはきたいことも怒らないでくれて…自信持てって言ってくれて…すごく、嬉しかったのに。だから一緒に暮らすって決めたのに」
「すまん。けど」
「全部忘れちゃうなんて、ひどいよ! おじさんの馬鹿!」
スーツケースも、おじさんも、みんな置いて走った。
でも、これからボクはどこに行けばいい?
「おっ、ラクトじゃん。こんちはー」
魔法のように一弘さんが現れた。
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