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「ひどいよ、おじさん!」
ボクは、一弘さんが奢ってくれた全国共通のダブルバーガーに噛み付いた。
「きっと危険なレベルでクタクタだろうと思って迎えにきたけど、大正解かー。冴えてんなぁオレ」
「どこが! 全然手遅れじゃない!」
一弘さんはスマホをいじりながらハンバーガーにかぶりついた。お行儀悪い。ボクの周りにマトモな大人はいないの?
「そんな怒んなよ」
「でも! ボクの顔も忘れちゃったんだよ! これから一緒に住むのに、ひどいよ!」
「そりゃご尤も」
ダブルバーガーをぐしゃぐしゃに噛み砕く。一弘さんはスマホを伏せた。
「んー…今回より前に陣内に会ったのって、いつ?」
「え……震災の年、かな。片付け手伝ってくれた」
片付けだけじゃなく、ママに放射能のこと授業しにも来た。ママは(自分で呼んだのに)ちっとも聞いてなかったけど。
「いま中二だっけ、なら、えー…小四か? 顔変わってるかは微妙だな。身長と声の違いじゃね?」
「あ、声変わりはまだだったかも…確かに背も伸びたけど、でも顔そんな変わってないよ」
「その頃からその、デカいパンツはいてたのか?」
「え」
はいてない。コレはおじさんが買ってくれたものだ。それに当時は、ママの買う男の子っぽい服を着てた。
「さっき陣内、そのパンツや服装のこと、なんか言ったか? 男らしくないとか、そういうの」
「…ううん」
「なら大丈夫じゃね? 何忘れてても、芯は変わってないんだし」
「……そっか」
「陣内もビックリだろうさ。空港に来たら親戚の子がデッカくなってて、夏休み初日のはずが明日で終わるんだから。ちょっとしたタイムワープだろ」
「……そだね」
食べ終わったダブルバーガーの包み紙を丁寧にたたんで、顔を拭いた。
「おじさんとこ行かなきゃ」
「慌てんな。アイツならフードコートにいる」
「何で知ってるの⁈」
この人マジで魔法使いかなんかなの⁈
「さっきメールでやり取りしたから。ラクトはオレんとこ居るから、これ以上無茶して記憶無くすなって送っといた。ジッとしてるってよ」
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