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確かにおじさんはジッとしていた。全国共通のうどんを、食べもしないでボンヤリ見てる。
「おじさん」と声をかけると、ビクッとしてボクを見た。
「ラクト、ゴメンな。安心させようとして、逆に心配させた」
「うん。ボクもゴメン」
「一弘も……すまん」
「ホントにな」
一弘さんは怒った顔で座った。この人も怒ることあるんだ。
「お前、これから一緒に住むんなら、無茶しすぎると記憶無くす、って先に言っといてやれよ」
「…そうだな、すまん」
「詳しいことは知らねえけど、中二のガキが親元離れるって決めるまで色々あった筈だろ。それを今後の保護者にマルっと忘れられたら、ショックに決まってるだろうが。初手から不安にさせんな」
「……すまん」
「お前の才能は記憶を食う。もう食わすな。無茶すんな。無理と思ったら無理っつって休め。オレに何度も何度もこんな説教させんな」
おじさんは、最後の言葉にハッとした顔をした。
「本当に……すまん」
一弘さんは少し悲しそうな顔をした。
おじさんの表情は、少しどころじゃなかったけど。
おじさん、前にされた説教を覚えてないんだ。
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