永い夜

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 静かで穏やかな深夜零時。  蛍光灯の明かりに照らされながら、担当患者の状態を電子カルテに入力し、私は「んーっ」と伸びをした。    「じゃ、仁上(にかみ)森本(もりもと)ラウンド行こうか」  先輩の濱田(はまだ)さんが一時的に下ろしていた長い髪をヘアクリップでまとめながら立ち上がった。  私は「はぁ~い」と、重たい腰を上げた。あまりに集中しすぎて聞こえなかったのか、新人の森本はまだ真剣な様子でPCに向かっている。  「ほら、森本。ラウンド行くよ」  「は、はい!」  二回目の私の呼びかけに、森本は慌てて椅子から立ち上がった。  急性期病院の整形外科病棟。夜勤看護師は三人で、二交代制。濱田先輩は八年目、私は五年目、そして森本は今年入職したての一年目だ。  森本は濱田先輩と一緒に詰所より東側の病室を、私は西側を回ることにした。  患者のスースーと心地よさそうな寝息だったり、いびきや歯ぎしりを聞いて、異常がないことを確認する。それから、眠れなくてスマホを見ている学生の患者や、TVを見ているオジサン患者には「もう寝てくださいね」とやんわり注意する。  そしてラウンドの最後には、自力で寝返りを打てない患者の部屋に集合して、体の向きを変えて"褥瘡(じょくそう)"いわゆる"床ずれ"の予防に努める。  
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