8 愛の正体

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 と、渉がこびへつらうように目配せするが、修二はその視線を振り払い、にこやかに言った。 「男であろうが女であろうが、相手を傷つけていいわけがありません。まずはそのことを謝ったらどうです?」 「……っ」  修二の言葉に、渉の顔が燃えるように赤く染まっていく。こうやって妻の前で他の男に説教じみたことをされるのが、屈辱的なのだろう。  渉は口をぱくぱくとさせるが、反論の言葉は出てこないようだった。 「まあ、今日は僕と莉央と広香さんの三人で食事の予定があるので、旦那さんはまた後日来ていただけますか?」 「ですが、これは僕と妻が話し合うべき問題で……!」 「今は興奮状態のようですし、話し合える雰囲気じゃないですよ。もしよければ、話す時は僕もご一緒します。第三者がいた方が、スムーズに進むと思うので。とりあえず今日はおかえりください」  修二は有無も言わさぬ言い方で、エレベーターの方を手で指し、にっこりと微笑んだ。  渉はその恐ろしいほど綺麗な笑顔に圧倒されたのか、オドオドしながら後退りした。 「そう、ですね……」 「では、また」  修二が呆然と立ちすくむ渉を置いて、部屋の中に入りドアを閉めた。  閉まる直前のドアの隙間から見える渉は、血が出そうなほど強く唇を噛み、足元のコンクリートをじっと見つめていた。    渉を追い返してくれた修二に、莉央は「あんたやるじゃん!」と嬉しそうに背中を叩いた。  修二には弁護士を紹介してもらったこともあり、夫と何があったのかは一通り説明していた。それなのに、冷静に対処してくれたおかげで助かった。
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