8 愛の正体

6/11
前へ
/84ページ
次へ
 しかし、あの様子では次なにをしでかすかわからない。この場所もバレてしまったのは、もしかしたら尾行していたのか、探偵を雇っていたのかもしれない。    その日から数日後、広香は引き止める莉央にお礼を言って、ウィークリーマンションに引っ越し、内容証明が渉の手元に渡る日を待った。   **** 『だーりんのことが好きすぎて死んじゃいそう。いっそ私のこと殺してくれればいいのに』 『彼、奥さんともうすぐ離婚するらしい。嬉しい嬉しい嬉しい。けど、色々言われて元気ないみたい。あのクソババア、今度彼に酷いこと言ったら殺してやる』 『彼に近づく女は全員消えて。お願いだから』  タイムラインに流れるそんな投稿を見て、広香は思わず口元を手でおさえる。  仕事からマンションに帰って、るり子のSNSをチェックするのが広香の習慣になっていた。不倫の証拠はすでに掴んでいるが、あまりにも投稿の内容が過激で、もしかして自分のことも名指しで書かれるんじゃないかと、恐ろしかったのだ。    会社で別居について話したあの日、広香の思惑通り、るり子は渉のいる自宅に押しかけ、夫と寝ていた。  後日、その映像を見た時、怒りと吐き気でまた悪阻が始まったのかと勘違いするほどだった。  そんな広香が不倫現場の鮮明な映像を最後まで見られるわけもなく、撮影したデータを弁護士に送って確認してもらった。映像には二人の顔がはっきりと映っており、不倫の証拠として十分過ぎるほどだと言われた時は、心底ホッとしたものだ。
/84ページ

最初のコメントを投稿しよう!

450人が本棚に入れています
本棚に追加