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「だから、夫と結婚するのも自由にしてください。その代わり、あなたも今後私には関わらないでほしい。養育費は請求するけど、子供には会わせる気はないし、この先一生関わりたくないと思ってるから」
「嘘だ」
「え?」
「じゃあ、なんで渉さんは結婚の話を先延ばしにするわけ? なんで最近冷たくなったの? あんたが渉さんを引き止めてるからでしょ!」
「それは……」
渉が世間体を気にするあまり離婚を拒絶している可能性は大きいが、愛に対して冷たくなったのは、もしかしたら本命の不倫相手がるり子だからなのかもしれない。
しかし愛は、渉の相手は妻である自分のみだと思い込んでいる。このままではいくら説明しても、渉に相手にされないのは広香のせいだと決めつけてくるに違いなかった。
言うのに一瞬迷ったが、るり子を庇う義理もない。広香は思い切って口を開いた。
「あなたのお友達の一ノ瀬さんも、渉さんと身体の関係を持ってるの」
「え……?」
「信じられないと思うけど、うちの寝室でセックスしてる二人の動画も持ってるし、あの人も認めたわ。これは写真だけど……」
「かしてっ!!!」
愛が広香の手からスマホをふんだくり、震える手で、リビングでキスをする二人が写っている写真をなぞった。
「嘘……私のことだけを愛してるって言ってたのに……るり子ちゃんだって、私たちのこと応援してるって……」
愛の目にはみるみるうちに大粒の涙がたまっていった。
「けど、けど……!私、渉さんとの子供妊娠してるから!るり子ちゃんとは別れて、私だけを見てくれるはずなんだから!」
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