8 愛の正体

11/11
前へ
/84ページ
次へ
「そう思うなら、本人に確かめてみたらどう?」  もし渉に振られたりなんかしたら、この女はきっと逆上して渉のことを刺してしまうかもしれない。  それくらいの狂気が、彼女の目には宿っていた。しかし、それもすべて純粋無垢な女性を騙した渉の責任だ。 「あなたと会うのもこれが最後だと思うから。渉との幸せを願ってるわ」  広香は愛の手から自分のスマホを抜き取り、立ち上がった。万が一、渉と結婚できたとしても幸せになれるはずがない。自分の二の舞になるだけだ。    喫茶店の外に出て、ちらりと愛の方を見ると、身動きひとつせず、ただただ涙を流し俯いていた。
/84ページ

最初のコメントを投稿しよう!

496人が本棚に入れています
本棚に追加