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そう決意して、渉は返信をスマホに打ち込んだ。
『ごめん、忙しいからしばらく会えない』
そう返信すると、愛からすぐに返事が来た。
『私、渉さんとの子供を妊娠したよ』
「はあ!?」
(ありえない……妊娠だと?)
「冗談だよね?」と送ろうとすると、愛からエコー写真が送信されてきた。
嘘ではない、本当に彼女は妊娠したのだ。
ただでさえ広香とのことでストレスを感じているのに、好きでもない、別れたいとすら思っている女が妊娠しただなんて、最悪の状況だった。
急いで愛に電話をかけると、スマホの前で渉からの連絡を待っていたのか、愛はワンコールで電話に出た。
「もしもし」
「おい、妊娠したって本当なのか?」
「うん。本当だよ。だから、産んでいいよね?私たち、結婚するんだから」
「ちょ、ちょっと待ってくれ!今どこにいるんだ。一回落ち着いて話そう」
元々勘違いしやすいタイプだとは思っていたが、愛は当然のように自分と結婚するつもりのようだ。
渉はどうにかして愛を諦めさせようと、頭を捻らせた。
電話を切ってすぐ、家の近くの公園で愛と待ち合わせた。
ベンチに座っていた愛は、渉の顔を見るなりわざとらしくお腹に手を当てながらこちらに手を振った。
「……渉さん!」
「久しぶりだな……」
「うん!会えて嬉しい!この子も喜んでるよ、パパと会えて!」
そういって愛おしそうに自分のお腹を撫でる愛に、渉はゾッとした。
「そのことなんだけどさ……悪いんだけどその子は堕ろしてくれないかな」
「え……?」
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