492人が本棚に入れています
本棚に追加
「そんなのヤリたくて、嘘ついたに決まってるだろ? それなのに妊娠したとか、結婚とか、めんどくさいこと言うなよ……。子供も絶対堕ろして。僕はちゃんと避妊してたんだから、妊娠したのは君の責任だ。手術代はそっちででなんとかしてくれよ。僕にはもう二度と連絡してこないでほしい」
「渉、さん……?」
愛の顔がどんどん青白くなっていく。全身が小刻みに震え、少し押しただけで、膝から崩れ落ちてしまいそうだった。
「ねえ、いいの……?男の子だよ?渉さんがずっとほしいって言ってた男の子がここに!私のお腹にいるんだよ……?」
「バレバレの嘘つかないでくれる?こんなに早く性別なんてわかるはずないだろ」
「嘘じゃない!この子は絶対男の子なの!」
目を大きく見開きそう訴える愛を、渉はうんざりした顔で見た。
「……どちらにせよ、子供を認知する気はないから。もう会うのも今日で最後だ」
「やっぱりるり子ちゃんの方が大切なんだね。るり子ちゃんのせいで……あのアバズレ女のせいで渉さんは変わっちゃったんだ……」
「るり子は別に関係ないだろ……」
すると、愛は突然カバンからナイフを取り出し、自分の腹に向けた。
渉はギョッとして、後退りした。
「おい、何してるんだ!やめろ!」
こんなところで自殺未遂でもされたら、警察に事情聴取されるのは渉だ。もしかしたら会社にも連絡がいって、不倫の事実や広香とのゴタゴタもバレるかもしれなかった。
面倒ごとには巻き込まれたくない。渉は愛からナイフをとりあげようと、手首を思い切り掴む。
最初のコメントを投稿しよう!