10 幸せな記憶【最終回】

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「たしかに俺はさ、るりちゃんのこといい女だと思ってるけど、結婚するよりは今の恋人関係の方がお互い幸せになれると思うんだよね。それに、るりちゃんは広香の会社の後輩だし、もし俺と再婚なんてしたらるりちゃんだって立場が……」 渉がそう言うと、るり子はぷっと吹き出した。 「るりちゃん……?」 「もしかして渉さん、私が結婚したがってるって思ってる?」 「え?いや、その……」 「もうやだぁ!そんなわけないじゃん!渉さんみたいな金ないくせに偉そうな男と結婚とか絶対無理だもん。私、先輩みたいな奴隷になりたくないし」 「え……?」 「ごめんね、勘違いさせちゃってー。私はただ先輩の旦那寝とって、先輩が苦しむの見たかっただけだから。渉さんのこと全然好きじゃないから安心して。てか、私彼氏いるし」 「……」  そうあっけらかんと言い放つるり子に、渉は驚きで何の言葉も出なかった。  こんな女とセックスしたばかりに、自分は広香に離婚を突きつけられ、屈辱的な思いをしたのか。こんな女を家に連れ込んでしまったばかりに……。 「まあ、もういいじゃん!愛だって紹介してあげたんだし、渉さんもセックスの相手に困らないでしょ?とりあえず今日は最後の晩餐会にしよーよ!ここの路地を抜けたとこに、いい店があるから……」  その時、誰かがタッタッと後ろから走ってくる音が聞こえた。るり子が路地の端によろうとした次の瞬間、フードを被った女がるり子に体当たりした。 「え……?」    さっきまでケラケラと笑っていたるり子の顔から笑顔が消え、ぐらりと前に倒れる。 「るりちゃん……?」
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