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「渉さん。嬉しい?これで私たちを邪魔する人は誰もいなくなったんだよ」
「な、何言って……」
「私たちがハッピーライフを送るために、この女を殺してあげたの!ねえ、私こんなに渉さんのこと愛してるんだよ!誰かを殺しちゃうくらい、あなたのこと愛してるの!」
「……」
渉は恐怖で絶句した。ズボンがじっとりと濡れ、尻餅をついたところのコンクリートが黒に染まる。
「あっ、もしかしておもらししちゃったの?渉さん、赤ちゃんみたいだね。あ、そうそう。私たちの赤ちゃんね、死んじゃったんだ。渉さんのせいだよ」
「……」
「だからね、もう一回赤ちゃん作ろう?次もきっと男の子が産まれてくるから安心して」
「やめ、やめてっ……!」
「どうしたの?一緒に帰ろう?帰ってお家でセックスしようよ」
差し伸ばされた手を思い切り払いのけ、渉は力を振り絞り走り出した。
「待って!渉さん!!!待ってよ!!!!」
後ろを振り返ることもなく、渉はただただ夜道を走った。
(どうしてこんなことになったんだ……どうして……!)
後ろから、きゃー!という女性の悲鳴が聞こえた気がしたが、構わず走った。しばらくして、目に入った歩道橋を一気に駆け上がり、荒い息をどうにか抑えながら、道路の方を見る。
愛はついてきていないようだった。路地とはいえ、人通りがまったくないわけではない。るり子を刺して血だらけになっていた愛は、今頃警察に通報され、捕まっているはずだ。
「ハァハァ……僕は悪くない。愛が勝手に勘違いして殺したんだ。僕は悪くない、僕は何も知らない……!」
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