虫姦芸術。

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 日曜日。  待ち合わせは昼だったので、普通に朝に起きた。  気合いを入れるわけではないが、朝からシャワーを浴びた。  異性と二人で会うのだから普通、メイクぐらいはするのだろう。が、残念ながら私は生まれて一度もメイクなどしたことがなかったし、道具すら持っていなかった。なのでシンプルにシャワーと歯磨きだけ済ませて、家を出た。  待ち合わせはさきほど書いた通り、アキラの住む街の、とある駅付近にある喫茶店だった。  私は目的の駅に到着するとアキラに、『✕駅に着いたよ』とメールを送った。するとすぐ、『喫茶店の一番奥の席にいるよ』と返事が来た。  私は辺りを見回し、喫茶店を見つけると、そこへ向かった。  喫茶店は『新生活』という名前だった。この店名を見て、個人的に家具屋をイメージした。  店に入る。店内は明るく、有線と言うのか分からないが、ここ最近のヒット曲が流れていた。 「いらっしゃいませ。お好きな席にどうぞ」  私と同い年ぐらいに見える女の店員が言う。私と違いしっかりとメイクをしていて、綺麗だ。同い年ぐらいの綺麗な女に居心地の悪さを感じるのは、その日人生で初めて、異性と個人的に会うからだろうか。考えすぎだろうか。  アキラが言っていた一番奥の席に視線を移すと、たしかに男が座っていた。他にも数人の客がいたが、昼どきかつ駅の近くにある喫茶店にしては静かだった。
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