虫姦芸術。

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 正直、お腹はあまり空いていなかった。なので、アイスココアだけを頼むことにした。 「私、飲み物だけにします。あまりお腹空いてなくて」 「そう? じゃあ俺もそうしよ」  そして呼び出しボタンを押し、アイスココアを頼んだ。アキラはアイスコーヒーを頼んでいた。  アキラはここで昼食を摂りたかったのに私に合わせてくれたのだろうか。だとしたら申し訳なかった。  そのように考えていると、アキラが口を開いた。 「タランチュラ、飼いたいの?」  そう言われ、さっきまで内心気後ればかりしていたが、それが今日ここへ来た目的であると思い出した。 「そうなんですよ」 「飼いたいと思ったきっかけとかあるの?」  私は、小さい頃から虫が好きだったこと、その熱が、生き物掲示板の虫スレでタランチュラの画像を見て再燃したことなどを告げた。  アキラは「へぇー」と言うと、「昔から虫が好きなのは俺と同じだね」と続け、「タランチュラの種類とかは詳しいの?」と聞いてきた。  そこで店員が飲み物を運んできたので返事を一旦保留し、店員が去ってから、「詳しいってほどではないですが、自分なりに調べたりはしました」と答えた。  アキラと会うまでの間、携帯電話を使いタランチュラについて勉強したりしていたので、それは事実だった。  私はここ一週間ほどで、本当に有名な種であれば、分かるぐらいになっていた。
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