虫姦芸術。

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「じゃあ、さっそく見に来る? 家、ここから近いんだ」とアキラが言ったので、「じゃあ、お邪魔しようかな」と返事をした。  私たちは飲みかけのアイスココアやアイスコーヒーを流し込み、喫茶店『新生活』を出た。お会計はアキラが支払ってくれた。  店を出てアキラに付いて行くと、五分ほどでアキラが住んでいるというアパートに着いた。季節は夏で、喫茶店にいたときは引いていた汗が吹き出していた。 「待って。今開けるから」  そう言ってアキラはズボンのポケットから鍵を取り出し、鍵穴に差し込んだ。  ドアが開くと「いいよ、上がって」と言うので、「お邪魔します」と言って入った。 「まっすぐ行った奥の部屋に入って」  そう言われて奥のドアを開け中に入ると、私は冷気に包まれた。 「冷房つけっぱなしだよ?」  私が言うと、既に部屋に入ってきていたアキラが部屋の奥を指差し、「こいつらがいるからな」と言った。  アキラが指差すほうへ視線をやると、そこには三段あるメタルラックが置いてあった。そのラックの上にはたくさんのプラスチックの容器が……。タランチュラだろう。他にもベッドや本棚があった。  そのとき私はまえに見たタランチュラの飼い方を思い出した。そういえば温度管理はエアコンで可能と書いてあった。すっかり忘れていた。
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