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俺様なあいつ
『変わりたい』
ぼっちの叫びを一番に聞きとったのは、80億分の1人のオレ様黒王子でした。
あいつは隠キャとしてクラスに溶け込んでいるけど、仮面の裏はSNSフォロワー数500万人超えの子役出身の人気イケメン俳優。
しかし、肝心な中身は私の人生にねじ込んでくる疫病神(やくびょうがみ)だ。
訳あって彼の家で家政婦として働く事になり、
切っても切れないくされ縁に……。
あいつに目をつけられてから地味子人生が
ジェットコースター級に翻弄(ほんろう)されていく。
あいつは人一倍自分勝手だし。
『えっ! ええええっっ!! ちょ……ちょっと待って!! 私の髪を切っていいなんてひとことも言ってないっ!』
『ダメだった?』
異様に高慢だし。
『インスタのフォロワー数500万人の俺がSランクなら一般人のあいつはBランク。俺はナンバーワン以外興味ない』
強引な上に俺様だし。
『俺のモチベーションを上げるのも家政婦の仕事だろ? お前が他の男の話をしても俺には何のプラスにもならない』
憧れの彼には秘密を暴露(ばくろ)するし。
『こいつの趣味オタゲーなの知ってる? 中高生で流行ってる王子様の恋愛ゲーム。めっちゃどハマりしてるの』
人生史上最低最悪男で、簡単に私の気持ちを無視してくる。
『やだっっ!! 寝顔の写真なんて撮らないでよ』
『だ〜め〜。仕事をサボった証拠だから消さない』
地面を歩くような感覚で人の善意を潰していくし、俺を褒めろとか訳わかんない事を言うし、いきなりドラマのセリフを言って胸をドキっとさせてくるし、芽生えそうだった恋心まで摘んでいく。
一度口にしたらキリがないほど、あいつにぶちまけたい文句が積もり積もっている。
それに、あいつの事なんて全然興味がないのに……。
「……俺、お前のそーゆーところ好きかも」
時たま私だけに覗かせる甘い顔が、恋レベルをグングンと押し上げていく。
※この物語はフィクションです。
執筆開始 2023/10/22
完結 2023/12/26
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