第六章

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 気づいたクラウスは彼に視線を向け、声をかける。 「なぜ、ここに? 今日はお前に用はないと言っていたはずだが?」 「殿下のことが心配でしたので様子を見に来ました。ですが、お部屋に不在でしたので戻ろうとしているところです」  だから見張りも彼を通したのだろう。適当な言い訳を並べ立てれば、あそこを通ることができるような男なのだ。 「そうか、だったらさっさと持ち場に戻れ」  クラウスの言葉に男は顔をしかめた。 「殿下……。もしや、工場の方に行かれておりましたか? その……、臭いが……。すぐに風呂に入られるのであれば、誰かに言付けますが」  男が「臭い」と口にした途端、クラウスは顔を歪めた。なぜそのようなことをこの男から指摘されなければならないのか。 「不要だ。いいからお前はさっさと持ち場に戻れ」 「失礼しました」  男は頭を下げると、クラウスの前を通り過ぎていく。  ちっ――。  クラウスは舌打ちをした。 (なぜあいつがアデラと会う必要がある)  怒りにまかせて床を踏みしめながら、クラウスは自分の部屋ではなくアデラの部屋の前に立つ。扉を叩くと、不機嫌そうなアデラの声が中から聞こえてきた。
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