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エルランドが答えるよりも先にファンヌがそう答えていた。エルランドが冷たい視線をファンヌに向けてきたが、彼女はそれすら気にしない。
「エル。研究室の方はいつでも使えるように空けておいた。ファンヌ嬢には隣の部屋を空けてある。そっちも自由に使え」
「はい」
「だから、時間があるときは私の仕事を手伝え」
「はい……」
二回目のエルランドの返事が、いささか小声に聞こえたような気がする。
『調薬室』を出た二人は、並んで歩く。
「そういえば、先生。先生もこの国の王子でいらっしゃるわけですよね」
ファンヌは不本意ながらもクラウスと共に過ごしていた時間を思い出していた。彼が側にいるときは、いろんな人からの視線が気になっていた。
「まあ。そう呼ばれていたかもしれない。ただ、あっちにいたのが長いから、あまり気にしていない」
あっちとはリヴァス王国のことだろう。リクハルドも十年近くエルランドがリヴァス王国に行っていたようなことを口にしていた。
「兄たちもいるし。オレは別に好きなことをしていたいから」
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