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エルランドの言葉だけを聞けば、気ままな三男坊という感じがするし、リクハルドが「エル坊」と呼んでいたのも納得できるような気がしてきた。
それでもファンヌには気になっていることがある。
「では、先生には護衛とかがついていないのですか?」
「この国では、そんなもの、不要だ。人がたくさん集まるときは別だが。基本的に結界を張り、不審な輩は入れないようにしている。それに、オレたちを襲うような暴漢などいない。王族は獣人の血が濃いことを、この国の者は知っているからな。オレたちを襲ったら返り討ちにされることを、みんなわかっている。だから、この先のウロバトの街くらいであれば、二人で行くことができる」
二人で、と口にしたところだけエルランドの声が小さくなったようにも聞こえた。
「じゃ、早速、美味しいレストランに連れて行ってください」
余計な護衛がついていないのであれば、ファンヌの気持ちも軽くなる。どこからか、誰からか見張られている視線が嫌いだった。全ての行動を監視されているようで。
「ほら」
エルランドが右手を差し出してきた。
「なんですか?」
ファンヌはその手をじっと見つめて尋ねた。
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