第四章

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「暴漢に襲われる心配はないが。ファンヌのことだから、迷子になるかもしれない」  その言葉を否定できないファンヌは恐る恐る彼の手を握った。こうやって家族以外の誰かと手を繋ぐことは初めてのことである。  変な気分になって隣のエルランドを見上げると、彼もファンヌに気づいたようだ。 「なんだ?」 「いえ……。なんでもありません……」  ふと恥ずかしくなったファンヌは視線を逸らした。  王宮から川沿いを右手にしながら歩くと、左側には薬草園が広がっている。目の前には王都ウロバトの街並み。王宮も薬草園も、少し高い位置にあるため、ここからウロバトの街を見下ろすことができるのだ。王宮の下で格子型に広がっているウロバトは、色とりどりのテントの天幕が溢れていて活気に満ちているように見えた。  左手の薬草園が途切れて、数分歩けばウロバトの街中へと入る。上から見えたテントは露店だった。テントの天幕の色で売っているものがわかるようになっているらしい。 「先生、あそこで売っているのはなんですか?」
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