第四章

18/25
前へ
/311ページ
次へ
「では、行こうか」  お昼の時間帯ということもあって、食べ物を扱う赤色の天幕の露店の前には、人だかりができているところもあった。それも気にしながら、ファンヌはエルランドに引かれるようにして、目的のレストランへと足を向けていた。 「ここだ」  エルランドに案内されたレストランは入り口の壁が少しだけ張り出していて、その上を天幕で覆っている建物だった。もちろん、その天幕の色は赤色である。壁は白いが、急勾配の切妻屋根は赤色。  入口の扉をカランコロンとベルを鳴らして開けると、肉の焼ける匂いが鼻をかすめた。 「いらっしゃいませぇ」  昼の時間帯であるにも関わらず、店内は幾分か空きがあった。 「ここはゆっくりと食事を楽しみたい人が来るから、今日のような日は、意外と空いているんだ。外には露店もあるしな」  ようするに、仕事を持っているような者たちは、外の露店でさっと食事を済ませることが多いとのこと。こういったレストランで昼間から食事をするのは、込み入った話をする者や、純粋に食事を楽しみたい者が多いようだ。 「ベロテニアの伝統的な料理と言っていたが、ここは肉料理が多いんだ」
/311ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1583人が本棚に入れています
本棚に追加