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ファンヌは気持ちを誤魔化すために、適当な言葉を口にした。だが、エルランドが眉間に皺を寄せた。悔しそうにファンヌの顔を見ている。ということは、適当な言葉はあながち間違いではなかったということだ。
「先生」
呼ばれたエルランドは困ったような顔をしている。仕方なくファンヌは、彼の皿の端に残っていた人参をフォークに刺し、彼の口元に運んだ。
「はい。きちんと食べてください」
嫌そうに顔をしかめていたエルランドであるが、しぶしぶと口を開けてそれを受け入れた。ファンヌは満足そうに微笑んでから、食事を再開させた。
話の主導権はファンヌが握っていた。といっても、ベロテニアに関する質問が主だ。初めて訪れたベロテニアは、ファンヌにとって魅力的な国に違いはなかった。
何よりも、自然光をたっぷりと浴びて育っている薬草たち。それに茶葉も栽培しているとエルランドは口にしていた。今まだそこに足を運んではいないが、その場所にも案内する予定であると彼は約束してくれた。
「あ、先生。私、この後、少し寄りたい場所があるのですが……」
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