第五章

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 ヘンリッキの心の声が漏れている。不敬罪と言われてもおかしくないような言葉が、ヒルマにもハンネスにも聞こえたような気がした。  だがヘンリッキの言葉には一理ある。『製茶』は立ち仕事であるため、身体を酷使する。それを知って、あそこで働いていた者たちを労っていたのがファンヌなのだ。自身も『調茶』をすることから、その仕事の大変さを知っていたのだろう。 「ただ、ファンヌが言うには『製茶』はなかなか大変な仕事です。ですから、本人たちの希望を聞いて決めましょう。それよりも、茶葉摘みの人材を確保したほうがいいのではないでしょうか? あとは、薬草摘みですね」  ハンネスの言葉にヒルマが答える。 「薬草の方はね、エルさんから送ってもらうことになっているから大丈夫なのよ。ハンネスの言う通り、茶葉摘みの人材を揃えた方がいいかもしれないわね。きっと、あの()。こっちの茶葉が恋しくなると思うのよね」  エルランドの名前が出たところで、ヘンリッキとハンネスはヒルマに視線を向けた。だが、ヒルマは気にしていない。こういうところは、母娘(おやこ)そっくりだということにもヒルマは気づいていない。
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