第五章

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 ヒルマはエルランドから預かった魔法陣の写しを書いた紙を、ヘンリッキとハンネスに手渡した。 「実は、こういうものまで準備してもらったの。私の魔力では無理だけれど、あなたたちならできるわよね」 「これは……。転移魔法の魔法陣の応用系。さすがキュロ教授だ。これがあれば、転移魔法が使えない者であっても、こちらとあちらの物のやり取りが簡単にできる。まあ、それなりに魔力を必要とするが」 「ああ、でしたら父さん。そういった物の移動を専門に行う人も雇ったらいかがでしょう。少し他の者より魔力を多く備えている者で」 「なるほど」  結局話し合いの結果、王都からオグレン領に来ることを望む者には、茶葉の栽培と茶摘みとその加工、薬草の選別や調薬の補佐、そして物品を移動させることを仕事として与えることにした。  そういえば、とハンネスが口を開く。 「あの王太子がクソなのは、なんとなく気づいていましたが。ですが、アデラ嬢の腹の子は本当に王太子の子なんですかね?」  その言葉に、ヘンリッキは顔を曇らせる。 「どういうことだ?」
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