第一章

7/27
前へ
/311ページ
次へ
 兄のハンネスの言葉に、ファンヌは「そうです」と答える。するとハンネスの顔も、みるみるうちに曇っていく。 「どうかされましたか。お兄様」 「いや……。アデラ嬢が、気分が優れないということで医務室を訪れて、だな」  ハンネスの歯切れが悪い。 「私が、診察をしたのだが。どうやら彼女は妊娠しているようだった……。まさか、その相手がクラウス殿下だと?」 「そうです、そうなのです。ですが、お兄様が診察したのであれば、胎児の『魔力』を感じたのではないですか?」 『魔術』を使う人々には『魔力』が備わっている。医療魔術師となれば、この『魔力』を感じ、さらに『鑑定』することができる。医療魔術師の言葉を借りるのであれば、この『魔力』一人一人異なった性質や特徴を持つとのこと。それでも血の繋がりがある者同士の『魔力』には共通点があるらしい。 「いや。まだ胎児の『魔力』まではわからなかったな。だから、アデラ嬢の相手がわからなかった。ただ、その相手が殿下となれば、そのうち胎児から『魔力』も溢れ出てくるだろうし、気づく者は気づくだろうな。アデラ嬢の子が殿下の子であることに」
/311ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1578人が本棚に入れています
本棚に追加