第五章

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「『製茶』が大変であることは知っている。君が、彼らを労わっていたことも。だが、ここはリヴァスではなくベロテニアだ。ベロテニアの人間は、獣人の血を引いているからな。それが薄くなったとしても、ゼロになったわけじゃない。リヴァスの者に比べて体力はある」 「つまり、ベロテニアの人たちなら、『製茶』の作業に向いているということですか?」 「そうかもしれない」  エルランドの話を聞いたファンヌは、やはり唸った。  というのも、『調茶』や『製茶』にはリヴァス王国の茶葉を使いたいからだ。だが、『製茶』作業に向いている者たちはベロテニアにいる。二つの国の距離は馬車で三十日もかかる。簡単に行き来できるような距離ではない。 「茶葉はリヴァスの物が欲しい。だけど、製茶の人はベロテニアにいる。もう、物理的に無理じゃないですか」 「無理ではない。転移魔法を使えばいい」 「転移魔法って……。まさか、物だけを転移させるんですか?」 「そうだ」  ずっと前を見つめていたエルランドは、そこでファンヌの方に顔を向けた。
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