第五章

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 ドキっと、またファンヌの気持ちが高鳴ったのは、エルランドの笑顔が眩しく見えたからだ。目が疲れているのだろう、と瞬きを多めにする。 「先生。私は生活魔法しか使えないんですよ。それに、魔術師の中でも転移魔法は上級魔法じゃないですか」 「だから、オレなら使えるし、オレならそれを応用させることもできる。誰でも転移魔法が使えるように」  それは、エルランドがベロテニアの王族だからだ。という理由は、以前も聞いた。 「ベロテニアから薬草をリヴァスのオグレン領に送り、オグレン領からは茶葉を送ってもらう。そういったことが、オレがいれば可能だ」  ファンヌを連れてベロテニアに転移したことから、エルランドの実力は知っているつもりだ。だが、今の話を聞いて、一つだけファンヌには気になったことがあった。 「なぜ、ベロテニアの薬草を、向こうに送る必要があるんですか?」 「それは、君の母親と約束をしたから、だな……」  エルランドの言葉を聞いて、ファンヌは大きく目を見開いた。 (お母様ったら、なんてことを先生にお願いしているのよ)
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