第五章

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 つまり薬草の聖地であるベロテニアから、薬草を送るようにとヒルマがエルランドにお願いしたのだろう。ヒルマならやりそうなことだとファンヌも思っている。と同時に、そんなお願いをしてしまっているヒルマのことが恥ずかしい。 「先生、ごめんなさい。母が、変なことを頼んだみたいで」 「いや……。君の両親には世話になったから、気にするな……」  それがエルランドなりの気遣いの言葉のつもりなのだろう。それよりも、ファンヌの両親からどんな世話になったのかが気になった。けれど、それを口にするきっかけもない。 「そうですか……。ありがとうございます」  ファンヌが礼を口にしたことで、エルランドの口元が緩んだ。 「だったら。早速、『製茶』の工場について考えよう。それから、君の『調茶』の技術。君さえ良ければ、他の者にも教えて欲しい」 「え? 私が、他の人に? 教えることなんてできませんよ」 「だが、いつまでたっても他の者が『調茶』できなければ、『調茶』は広まらない。オレにも教えて欲しいと、いつも思っている」 「私が先生に、ですか? 先生が私に、ではなく?」  ああ、とエルランドは頷く。
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