第五章

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「オレだって、『調薬』の他にももっと知識を広げたいと思っている。君さえ良ければ、オレにも『調茶』について教えて欲しい」 「え、私が先生の先生にってことですか?」 「そうだな。そうなったらオレがファンヌのことを『先生』と呼ばなければならないな」 「やめてください。ややこしいですから」 「だったら。オレのことを名前で呼べばいいだろう?」 「名前……」  そこでファンヌは視線を逸らした。今まではエルランドのことを『先生』と呼ぶことで、師弟関係であることを意識していたのだ。 「名前……」 「どうした、ファンヌ。もしかしてオレの名前を忘れたわけじゃないよな?」 「知ってますよ」 「じゃ、名前で呼んで?」  こんな風に愉悦に満ちた笑い方をするエルランドは見たことが無い。  すかさずエルランドはファンヌの両手を握った。 「ファンヌがオレのことを名前で呼ぶまで、この手は離さない」 「先生……。なんか、性格がお変わりになりましたか? なんで、今日はそんなに積極的なんですか」  ファンヌは自分の顔が火照っている自覚はあった。 「エリッサから言われた。そろそろ行動にうつせ、と」
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