第五章

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 うぬぬぬとファンヌは唸ることしかできない。 (エリッサ……。どうして余計なことを先生に吹き込むのよ……)  ファンヌはここでの仕事を終えると、エリッサのところによってお茶を飲んでから帰ることもあった。年代も近いこともあり、他愛のないおしゃべりに花を咲かせる。むしろ、ファンヌはエリッサからそういったおしゃべりを通して、このベロテニアについて学んでいた。  特に獣人の血筋と、王族の関係について。獣人の血がまだ色濃く残っている王族。他の民とは何が違うのか。  エリッサが言うには「よくわかんない」だったのだが。 (エリッサ。こういうことだけは、よくわかっているのね……)  悔しそうに唇を噛みしめて、ファンヌはエルランドを見上げた。この顔は有言実行してやるという自信に満ちている顔だ。  つまり、ファンヌが彼の名を口にするまで、本当に手を離さないつもりなのだろう。 「エルランド先生……」  ぱっと、エルランドの顔が輝いた。 「エルランド先生とお呼びすればよろしいですか?」 「ファンヌがオレに『先生』をつけるなら、オレもファンヌのことをファンヌ『先生』と呼ぶ」
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