第五章

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 初めて「ファンヌ先生」と呼ばれた彼女は、首をすくめた。全身に恥ずかしさが込み上げてきたからだ。 「や、やめてください。先生から先生と呼ばれると、気持ち悪いです」 「だったら、ファンヌもオレのことを先生と呼ぶな」  呼ぶな、と言われてファンヌは少し考えてから口を開く。 「エルランド……さん?」 「エルでいい……」  先生呼びから一気に愛称呼びはいろいろ途中の過程をすっ飛ばしているような気もするのだが。  それでもぎっちりとエルランドが両手を握っているということは、愛称で呼ばないとその手を離さないという意味なのだろう。 「エル……さん……」 「なんだ?」  エルランドは嬉しそうに笑った。 「呼べと言ったから、呼んだだけです……」  ファンヌは恥ずかしくてエルランドの顔を見ることができなかった。視線を下に向け、彼から顔を背ける。それでもエルランドの輝く視線は感じていた。  ただでさえ彼の『番』と周囲から言われ、動揺していた。やっと落ち着きを取り戻したところに、またファンヌを動揺させるような案件が発生した。 「よし、ファンヌ。早速だが、オレにも『調茶』について教えて欲しい」 「はい……」
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