第五章

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 そういった話はリヴァスにいたときにも何度も耳にしていた。工場で働く女性の中にもそれで悩んでいる人がいて、ファンヌは痛みを和らげるお茶を調茶し、その茶葉を渡していたのだ。 「それなら、よく効くお茶があるのだけれど」 「本当?」  ぱぁっとエリッサの顔が明るくなった。よっぽど酷いのだろうとファンヌは思った。症状には個人差があるし、他人の痛みをわかることはできない。恐らくエリッサはそれをわかってもらえた気分にでもなったに違いない。 「だけど。茶葉がこちらにはなくて。リヴァスの茶葉を使った方が効くと思うのよ。しばらく時間がかかるかもしれないけれど、大丈夫かしら?」 「えぇ……。オスモ先生から薬も処方してもらっているから、万が一のときはそちらを飲むし」 「お茶が効くか薬が効くかもその人にもよるから、お茶の効果も絶対とも言えないけれど」 「そうね……。でも、少しは良くなるかもしれないと言われたら、やはりそこに希望を持ってしまうわよね」  エリッサは自嘲気味に笑った。けして恥ずべき内容でもないのに、そうやって女性から自信を失わせてしまうことも、ファンヌとしては悔しい思いでいっぱいだった。
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