第五章

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「ありがとう、ファンヌ。あなたに相談してよかったわ……」  目の前のエリッサの姿を見たら、エルランドの名前のことなどどうでもいい問題に思えてきた。  エリッサとのおしゃべりをしているファンヌを呼びにくるのは、エルランドの役目だ。彼はこの間、王宮の方で調薬師としてではなく王族として何やら仕事をしているらしい。好きなことだけをやりたいと口にしている彼だが、やはり王族としてやるべきことはあるのだろう。 「ファンヌ。待たせたな」  エリッサと他愛のないおしゃべりに花を咲かせていると、用事を終えたエルランドが迎えにきた。  毎朝、エルランドと二人で『調薬室』を訪れ、日が傾き始める頃、二人で屋敷に戻る。これくらいの距離であれば、ファンヌ一人でだって行き来はできる。だが、エルランドがそれを頑なに拒んだ。  だから彼が王宮に用事があるときは、こうやってエリッサが相手をしてくれるのだ。彼女の都合がつかないときは、王妃やローランドやランドルフの妃が相手をしてくれた。
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