第五章

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 ファンヌがベロテニアに行くことを決めたから、両親と兄はオグレン領に戻ったはず。あそこは年中穏やかな気候であるため、茶葉を育てるのに適している場所だ。むしろ、ファンヌがお茶に興味を持ったのは、オグレン領で茶葉を栽培していたから。  ハンネスが王都パドマの学校に入学するまでは、オグレン領で暮らしていた。どこまでも広がる茶畑が、ファンヌの遊び場でもあった。  お茶を飲めば心も温まるし、そして気持ちが安らぐ。いろんな効能のお茶が無いだろうか、と思ったのが、彼女が『調茶』に興味を持ったきっかけだ。その頃は『調茶』という言葉もなかった。  ファンヌが十六になり、高等学校へ入学した時にエルランドと出会った。彼はすでに教授だった。他の先生とも比べ、比較的若い彼は、ファンヌにとっても相談しやすい相手になっていた。かつ、彼の専門は『調薬』であり、その技術をお茶の世界に生かすことはできないかと相談をした。  研究肌であるエルランドは、すぐさまファンヌの意見を取り入れ、『調薬』に対して『調茶』という言葉を作り、その『調茶』で論文を一本書くようにファンヌに提案してきた。
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