第五章

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 その論文が『調薬』の世界で認められ、薬草と茶葉における研究を差別化するため『調茶』という言葉が浸透し始めた。と同時に、ファンヌの『調茶』したお茶の効能も認められ、『調薬師』と同じように『調茶師』という言葉までが生まれた。 『国家調薬師』になるためには、論文を発表し世間に認められる必要がある。さらに、その『調薬』の腕前も確認される。それを『調茶』の世界にも応用したのだ。だからファンヌは十六にして『国家調茶師』を名乗ることができるようになった。  これが、彼女が十六にして『国家調茶師』にまで上り詰めた過程であるのだが。 「ファンヌ、帰ろうか。屋敷に戻ったら、これからのことをいろいろと相談したい」 「これからのいろいろって……。結婚に向けての話?」  エリッサが茶々を入れてくるが、エルランドはどこか落ち着きを払っている。今までの彼であれば、視線を泳がせて動揺している様子を悟られないように取り繕っていたはずなのに。 「エル兄さま……。ファンヌさんから名前で呼んでもらえるようになって、性格もお変わりになられたわね」  エリッサの呟きに、ファンヌもそういうものなの、と思わずにはいられなかった。
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