第一章

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 そのときの気分で薬草を摘み、茶葉を摘み、それらを組み合わせて調茶を行う。思った通りの味のお茶もできるときもあれば、想像しなかった味のお茶ができるときもある。効能を優先すれば味が落ちるときもあるし、味を優先すれば効能が落ちるときもある。もちろんどちらもうまくいくときもあれば、失敗するときもある。だが、それが調茶の楽しみ方の一つでもあった。 (今日は、ゆっくり休みたいわ……)  だからその花を詰んだのだ。  太陽がだいぶ西に傾いてきた。あと一時間もしないうちに、外は闇に覆われ始めるだろう。  ファンヌは摘み取った薬草を籠に入れ、小走りで屋敷の中へと戻っていった。  次の日――。  ファンヌは、邪魔になる髪の毛を少し高い位置で一つに結わえ、シャツにトラウザーズといういつもの姿で、懐かしい学校を訪れていた。  真っ白い外壁に青い屋根の四階建て。建物の中心は一際高く、時計がついている。学生や教師からは時計台と呼ばれている部分だ。
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