第一章

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 エルランドは二十代後半と聞いているのだが、どことなく行動が抜けているところがある。むしろ、飛び級で学校を卒業し若くして教授になっているのだから、もう少し威厳というものがあってもいいはずだと思っている。だが、それすら感じない。ファンヌから見たら、ちょっと手のかかる師というのがエルランドなのだ。 「まあ、とにかくそこに座れ」  エルランドが研究用に使っている大きな机の前に置かれているソファとテーブル。だがこのテーブルの上に、ゴミが散乱していることに先ほどからファンヌは気づいていた。 「先生……。先に、これ。片付けてもいいですか?」 「あ、ああ……。すまない。どうしても研究を優先させてしまうと、それ以外のことはどうでもよくなってしまうからな」  エルランドは昔からそのような傾向があった。ファンヌも似たようなところはあるが、ゴミだけはきちんと片付けていた。だから彼女がこの研究室にいたときは、このテーブルがゴミの山で埋もれることはなかったのだが。
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