第一章

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「えっ、あ……、あつっ……」  お茶を飲もうとカップを手にしていたのに、急にエルランドからそのようなことを告げられたファンヌは、カップをつい傾けてお茶を零してしまった。 「大丈夫か」  慌てて手元にあった布地(ぬのじ)を手にしたエルランドは、ファンヌの方に腕を伸ばして彼女の濡れている手を拭いた。 「先生。私、自分でできますから」  エルランドから布地を奪ったファンヌだが、どうやらこれが布巾(ふきん)ではないことに気が付いた。 「先生……。これ布巾じゃないですけど、なんですか? 使っていいものでした?」 「んあ? ああ、すまない。オレの下着だ。未使用だから心配するな」 「えぇと。どこからどう何を言ったいいのかがわからないのですが。とりあえず、洗ってお返しします」  この下着が上のものか下のものか、今、広げて確認するのはやめようと思っていた。 「あ、ああ。それでファンヌ。オレの聞き間違いでなかったら、君は、王太子殿下の婚約者を……」 「あ、そうです。辞めたんです。ですから、また先生の元で研究をと思ったのですが。先生が学校をお辞めになるのであれば、それもできませんよね……」
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