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銀のトレイの上にお茶の入ったカップを置き、寝台の隣にある小さなテーブルの上に乗せた。仄かにお茶の香りが部屋に漂う。
不思議なことに、ファンヌには彼の髭がヒクリと動いたように見えた。だが、それも一瞬。
――どんな姿になっても愛している。
口ではいくらでも言える。例えそれが本心でなくても。だから、行動で示さなければ疑われてしまう。
『呪われた王子様は、真実の愛によって目覚めるんだよ』
ハンネスの言葉が頭の中で木霊する。
(たったそれだけのことで、この人が目覚めてくれるのなら。私は何度でも……)
眠っているエルランドは獅子の顔を保ったまま。それでもファンヌは眠る彼の唇に自分の唇を重ね、目を閉じた。
髭が頬にふれ、ちょっとだけくすぐったい。思わず、ふふっとファンヌから笑みがこぼれてしまった。
「ファンヌ……。笑いながら、口づけをする奴がいるか?」
驚いて顔を離すと、目の前には碧眼を細く開けているエルランドの顔があった。
いつの間にか獣化が解けている。ほんのわずかな時間であったはずなのに。ファンヌが目を閉じていた、わずかな時間。
「えっ。えぇえええっ」
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