第二章

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第二章

 外遊を終えたリヴァス国王が戻ってきた。年はそろそろ五十に届くところ。金色の髪をなびかせながら、しっかりとした足取りで王宮内を歩く。 「ファンヌはどうした」  息子であるクラウスの部屋に入ってきた途端、彼の張り上げた言葉はそれだった。 「お帰りなさい、父上。父上に報告したいことがございます」  クラウスは顔を輝かせながら国王を見上げた。 「お前の報告は後で聞く。それよりもファンヌはどうした。工場(こうば)のあの状況はなんだ」  工場のことを言われても、クラウスには何のことやらさっぱりわからない。だが、わかることはファンヌがここにいないこと。 「ファンヌはもう、ここにはおりません」  クラウスの言葉に国王の茶色の目がギロリと鋭くなった。 「いないとはどういうことだ? お前の婚約者だろう。毎日ここで、教育を受けさせ、工場の管理をさせていたのだろう?」 「私とファンヌの婚約は解消されました」  一瞬、国王の全ての動きが停止したように見えた。その後、ふるふると身体が震え始める。 「何、勝手なことをしているのだ。お前とファンヌの婚約の解消など、そんな簡単にしていいものではないだろう」 「ですが」
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